by courtesy of Vincent Van den Storme
※俺のイタリアンとは全く関係がありません。
先日、俺の株式会社社長の坂本孝さんが書いたビジネス書「俺のイタリアン 俺のフレンチ」を読んだのですが、その中で発見したのが、俺のイタリアンの本当の競争優位性。差別化要素と言ってもいいかもしれません。星付きイタリアン料理をお手頃価格で食べられる点が、俺のイタリアンの差別化ポイントですが、実際は別のところにあるようなのです。
俺のイタリアンという飲食チェーンのビジネスモデルは、次のようにまとめることができます。
【俺のイタリアンのビジネスモデル】
[1]回転率を高めるために立ち飲み業態を採用
[2]食材原価率を業界水準より高め、食材で差別化
[3]ミシュラン級シェフを採用し、ブランド・調理技術で差別化
[4]従業員を商品開発・業態開発に積極的に参加させ、人材で差別化
このビジネスモデルは、特に異質なものではありません。1は業界の常識であり、2は業界の非常識ですが、回転寿司では行われていることです。3・4もなんら特別なものではありません。つまり、このビジネスモデルは、簡単に模倣できることなのです。よって、俺のイタリアンの成功を目の当たりにして、他の飲食企業が立ち飲み高級業態を展開することは容易に想像できます。
しかし、そう考えていたのは、坂本さんの本を読むまでのこと。この本には、俺のイタリアンが持つ本当の競争優位性が説明されていました。他の飲食業に真似できない本当の凄さは、
狭い厨房で高級レストラン並の調理作業を行う生産性の高さ
です。
具体的にどのような工夫が行われているかについては、書籍に明記されていません。しかし、キッチンスペースの大きなホテルのレストランや高級レストランと同様の料理を、3坪ほどの狭いキッチンで提供するのに、大変苦労されたようでした。しかし、その制約があったからこそ知恵が生まれ、生産性アップにつながったのです。そして、そのノウハウが、俺のイタリアンの競争優位性になり、参入障壁を高くすることに成功したのです。実際に同様の立ち飲み店が生まれているようですが、狭い厨房での生産性の低さがネックとなり、俺のイタリアンほどの成功は納めていないようです。
駅前などの好立地にショッピングセンターなどの商業施設が集まると、その周辺に人が流れるようになり、好立地の賃料がさらに上昇します。また、労働年齢人口の減少により、パート・アルバイトの獲得がますます難しくなり、時給の上昇傾向は今後も続くものと思われます。このような外部環境の中で高い収益性を保つには、いかに狭い店舗で売上を最大化させるかがポイントになります。俺のイタリアンは、この一見矛盾する命題を、生産性を高めることでクリアしているのです。そして、高い生産性こそが、俺のイタリアンの本当の競争優位性ではないでしょうか。
☆今日のまとめ☆
立ち飲み業態でミシュラン星付きレストラン並の料理を格安で提供する、俺のイタリアン。
このレストランの本当の競争優位性は、狭い厨房で生産性を高める知恵にある。
WSJを読むには、基本的な英単語を知っていなければなりません
☆ 今日のこぼれ話☆
俺のイタリアンの事例は、サービス業でも生産性が必要とされていることを物語っています。
生産性を高めることで、価格を下げても高い収益性を保つことが可能になるのです。